個人情報としての『名刺』情報の取扱いは?

写真:名刺交換
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個人情報としての『名刺』について考える。

ご存知の通り、2022年4月から改正個人情報保護法が施行となりました。主な改正内容など、弁護士さんをはじめ多くの専門家がネットや雑誌に記事を寄せていますので、これを機に、自社内での情報の取扱いについて点検・見直しの実施などをお勧めします。

ところで、ビジネスの現場で実に気軽に交換される「名刺」の扱いはどのような感じになるのでしょうか?

名刺に限らず、こうした具体的な疑問・不明については、「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(平成28年11月:個人情報保護委員会。以下、「ガイドライン」と表記)がお勧めです。法律の条文解説も含めながら、現実のビジネス現場で馴染みのある多くの事例が掲載されており、専門家でなくても読み易い構成になっています。

ガイドラインを「名刺」という具体キーワードで検索する5件ヒットします。

「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」

名刺は「個人情報」に該当するのか?

名刺も、生存する「個人に関する情報」であって、「当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」に該当するため、「個人情報」に該当するのですが、「個人データ」に該当するか否かは、検索性を満たしているか否かによって判断が変わるようです。

【個人情報データベース等に該当する事例】
事例3)従業者が、名刺の情報を業務用パソコン(所有者を問わない。)の表計算ソフト等を用いて入力・整理している場合
【個人情報データベース等に該当しない事例】
事例1)従業者が、自己の名刺入れについて他人が自由に閲覧できる状況に置いていても、他人には容易に検索できない独自の分類方法により名刺を分類した状態である場合

「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」「2-4 個人情報データベース等」から抜粋

「個人データ」に該当するか否かで、その取扱い方について求められることが異なりますから、要確認です。ただ、多くの場合は、取得した名刺情報は、社内で共有できるようExcelや社内システムなどに転記・登録していると思いますので、ほとんどの会社では「個人データ」として管理・利用している状況に該当しそうです。

名刺取得時に利用目的の明示?

個人情報を直接書面等で取得する場合については、法18条第2項に規定されています。

2 個人情報取扱事業者は、前項の規定にかかわらず、本人との間で契約を締結することに伴って契約書その他の書面(電磁的記録を含む。以下この項において同じ。)に記載された当該本人の個人情報を取得する場合その他本人から直接書面に記載された当該本人の個人情報を取得する場合は、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならない。ただし、人の生命、身体又は財産の保護のために緊急に必要がある場合は、この限りでない。

個人情報保護法第18条第2項

「直接書面等で取得」というのは、申込書や契約書、アンケート等、紙の書類に記載された情報だけでなく、パソコン画面からの入力による電子的な取得も含みます。そして、本人からこれらの情報を取得する場合は、『あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならない。』とのこと。

名刺を受け取ろうとする度に、あらかじめ、利用目的を書いた書面を渡したりしなければならないのか…?

これについて、ガイドラインに名刺に関して明記されていました。結論から言えば、名刺に法18条第2項の義務は課されないとのことで、一安心です。もし、課されるのであれば、裏面に小さな文字で、名刺の利用目的がビッシリ記載された名刺をあちこちで見ることになりそうでした。

名刺などは、一般の慣行として、自身の個人情報を、本人の自発的な意思で、任意の簡便な形式により相手に提供するものであり、申込書、アンケート調査票、懸賞応募はがき等のように、個人情報取扱事業者が一定の書式や様式を準備した上で、本人が当該事業者の求めに沿う形で個人情報を提供する場合とは異なることから、 本項の義務を課するものではないが、その場合は法第18条第1項に基づいて、あらかじめ利用目的を公表するか、取得後速やかに、その利用目的を、本人に通知するか、又は公表しなければならない。

「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」「3-2-4 直接書面等による取得」から抜粋

上記の法第18条1項は次の通りです。

1 個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。

個人情報保護法第18条第1項

「あらかじめ公表しておけば良い」ということになりそうなのですが、では、その「公表」について、ガイドライン中、次のように記載されています。

「公表」とは、広く一般に自己の意思を知らせること(不特定多数の人々が知ることができるように発表すること)をいい、公表に当たっては、事業の性質及び個人情報の取扱状況に応じ、合理的かつ適切な方法によらなければならない。
【公表に該当する事例】
事例1)自社のホームページのトップページから1回程度の操作で到達できる場所への掲載
事例2)自社の店舗や事務所等、顧客が訪れることが想定される場所におけるポスター等の掲示、パンフレット等の備置き・配布
事例3)(通信販売の場合)通信販売用のパンフレット・カタログ等への掲載

「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」「2-11 公表」から抜粋

実際、会社ウェブサイトのプライバシーポリシーや個人情報保護方針などのページ(多くの場合、トップページ内に該当ページへのリンクが設けられています)に、「取引先情報」や「顧客情報」についての利用目的などが記載されていることが多くなりましたよね。それらは、まさに、上記の「事例1」に該当する「公表」方法ということになります。

名刺の利用目的の通知等をしなくてよい場合

ガイドラインを「名刺」で検索してヒットした最後の箇所は、「利用目的の通知等をしなくてよい場合」についての記載箇所です。

法18条第4項には、利用目的の通知等をしなくてよい場合として列挙されており、その中の1項目に「取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合」という内容が含まれています。この部分についても、ガイドラインは「名刺」についてしっかり説明を加えていました(下記)。

(4)取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合

事例2)一般の慣行として名刺を交換する場合、直接本人から、氏名・所属・肩書・連絡先等の個人情報を取得することとなるが、その利用目的が今後の連絡 や、所属する会社の広告宣伝のための冊子や電子メールを送付する という利用目的であるような場合

「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」「3-2-5 利用目的の通知等をしなくてよい場合」から抜粋

上記を見る限り、法改正以前に増して、過剰な意識で名刺を扱う必要はなさそうです。ただし、明らかではない利用目的に利用する場合は上記の限りではありませんから、公表や通知は必要となります。例えば、名刺から取得した情報を、他グループ会社に提供する、その会社が参加しているコミュニティ組織からの参加勧誘に利用する、などが該当すると考えられます。

いかがでしたか?

今回は「名刺」をテーマに「個人情報」の取扱いを考えてみましたが、いかがでしたか。もし、個人情報の取扱いについて興味が強まったようであれば、今回ご紹介したガイドラインもそうですし、個人情報保護委員会やプライバシーマーク制度の各ウェブサイトにても、「分かりやすさ」が意図された多くのコンテンツが公表されています。

一度、ご覧になってみてはいかがでしょうか。

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