ITシステムの費用対効果。そもそも妥当な費用って分かるもの?

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会社の未来を支えるIT人材・ビジネス人材の姿とは?

IT人材やデジタル人材を取り巻く状況について、以前の記事『中小企業では「プログラムが分かる人材」の優先度は高くない。』にて、なるべく客観的な内容となるよう、公的な白書や調査報告書の内容を参照しながら紹介しました。

IT業界にいて多くのエンジニアと接している中で、IT人材が二極化しているように感じていました。
市場ではどうなのだろう?と調べていたところ、その印象と完全に合致するかどうかはっきりしませんが、前記事でも参照した経済産業省の『IT人材需給に関する調査 調査報告書』の中で、需給調査を『従来型IT人材』と『先端IT人材』に区分して試算していました。

そのように区分して試算を行った背景として、次のような説明がされています。

第4次産業革命に対応した新しいビジネスの担い手としてのIT人材の育成・確保の重要性という観点から、今後のIT人材施策の参考材料として、IT人材全体の需給ギャップの結果とあわせて、今後、大幅な需要増が見込まれる先端IT人材の試算を実施することは、大きな意義があるといえる。こうした問題意識に基づいて、以下には、先端IT人材/従来型IT人材に関する需給の試算結果を示す。

IT人材需給に関する調査 調査報告書 2019年3月

区別して試算するのは、例えば、「先端IT人材は需要が高い」一方で、「従来型IT人材は供給過多(需要が少ない)」になるような状況も予想されるからなのだろうと思われます。

報告書中では、「従来からのIT需要に対応するIT人材」を「従来型IT人材」と表現しています。「従来からのIT需要」とは?ということについては、例えば、システム開発で言えば、①単に指示された通りにプログラミングするだけのシニアプログラマー、②ソリューション提案ができないシステムエンジニア(SE)、③進捗聞いて、資料に落として、報告するだけの前近代的なプロジェクトマネージャー(PM)などが、私の頭には浮かんできます。

今回の記事では、「費用対効果を検証する」ということをテーマにしていますから、従来型IT人材ではなく、いわゆる、上記の先端IT人材やデジタル人材を頭に浮かべていただきながらご覧ください。

ITシステムの費用の多くは、標準化されていない人件費

取引の流れだけで変わってしまう費用

ご存じの方も多いと思いますが、IT業界では「多重下請け」構造が常態化しており、IT企業の中には「自社には案件実行体制・能力を持たず、エンジニアを右から左に流す」ことで得る中間マージンだけで成立しているIT企業もあるほどです。 中には、「こういうエンジニアが月あたり○円です。すぐ稼働できる人材です。どんな仕事でもOKです。」と、(おそらく)取引先のすべてにチラシのようにバラまいている企業もあるぐらいで、そうした企業を「右から左へ人材ブローカー」と揶揄した言葉で、同僚と会話ネタにしていたりもしました。

「自社だけだと不足しているエンジニア」を外部から調達する機会は多い思いますが、エンジニアの能力以外のところで費用がどんどん上乗せされていく、次のような構造は承知されていますか?

取引の流れだけでも費用が変わってしまう背景(イメージ)

上記は、同じ作業を同じITベンダーが担当するのであっても、商流の違いだけで費用に差が出ますよね?という例として、いくつか挙げてみました。

こんな単純な例だけでも、価格(クライアントから支払われる費用)には、1.3倍の開きが発生しました。数千万円、数億円規模のような規模の大きいITシステム開発になれば、下請けも、2次、3次・・・と多重が進んでいきますから、ますますコストが膨らみがちになります。建設業界でも「一括丸投げは間に入るブローカーだけが利益を得る」と話す方もあるようなので、似たような商流構造を持つIT業界も同様なのでしょう。

発注側の予算から逆算すると、500万円を一次請けの会社に支払っても、二次請けの会社には450万円、三次請けの会社には400万円、…のように次数を重ねるごとに発注額は下がっていき、そうすると、支払っている費用に比較してスキルの低いエンジニアが紹介される可能性が高くなります。そして、費用対効果が去っていく。。。

費用値効果の「目利き」には、自社ビジネスを知るIT人材の存在が重要

業務委託契約や派遣契約など、外部人材を活用しながら上手にITと付き合っていくことは、引き続き重要なことは明らかです(日本は、雇用流動化に消極的な政策ですし)。外部人材を調達するときに、「付き合いが長いITベンダーだと、指示も適当でいいから楽」といった「手間削減」最適ではなく、企業として必要な費用内訳になっているかを精査・検証できるようにするためにも、IT業界のビジネス構造や実態にアンテナを張った「IT人材」の存在は重要です。

上記で紹介したような、無駄な「効果を生まない費用(実質、契約と請求手続きしかしていない、発注側から見て何ら価値を認められない中抜き企業)」を無くしていくのも、そうしたIT人材の役割です。そして、このような機微なノウハウは、画一的なマニュアル化が難しい。。。

費用に関する「目利き力」の習得には「経験値=対応した数(対応したベンダー数、対応したIT作業数等)」がモノを言う。人材育成に一定の時間がかかるからこそ、将来に向けて「今から」準備を進めることを提案します。

ITスキルが豊富でなくても、こうした費用対効果の検証のようなことであれば経験豊富という方、社内にいますよね? こういうところから、IT力強化を図っていくのも大いに有効と言えます。今まで外部に頼っていたことをすべて社内に巻き取るのは難しい、けれど、こうして一つ一つ社内人材でできることを増やし、ノウハウを取り戻していきませんか?

ITに関するノウハウを自社に取り戻そう!

最後に

最後に、総務省の『令和3年版の情報通信白書』から、資料を一つ紹介します。

DXを進める上での課題として、人材不足を挙げているのが53.1%と最多になっていますが、その他、費用対効果が不明(32.8%)、ICTなど技術的な知識不足(23.8%)も、結局は「人材がいれば」解決できる課題と言えますから、IT分野を「人」が支える側面がいかに大きいかということが分かる結果です。

IT人材の育成、いきあたりばったりの「OJTもどき」ではなく、中長期計画を立てて、体系的に進めていきませんか?

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