中小企業のデジタル化動向ってどんな感じ?

目次

2021年版の中小企業白書から①

中小企業白書にも登場のキーワード “デジタル化”

皆さん、『中小企業白書』はご覧になったことありますか?(中小企業庁>中小企業白書

動向や実態を把握する上で、とても参考になる資料の一つです。私が注目するのは、数値等の具体内容もさることながら、毎年、変化する「目次」です。例えば、2020年版と2021年版それぞれの「第2部」を比べてみると次のような構成に変化しています。

  • 2020年度 第2部 新たな価値を生みだす中小企業
    • 第1章 付加価値の創出に向けた取組
    • 第2章 付加価値の獲得に向けた適正な価格設定
    • 第3章 付加価値の獲得に向けた取引関係の構築
  • 2021年度 第2部 危機を乗り越える力
    • 第1章 中小企業の財務基盤と感染症の影響を踏まえた経営戦略
    • 第2章 事業継続力と競争力を高めるデジタル化
    • 第3章 事業承継を通じた企業の成長・発展とM&Aによる経営資源の有効活用

かくいう私も、長年にわたって白書を利用・活用してきたわけではありませんが、2021年度版の目次『第2章 事業継続力と競争力を高めるデジタル化』に興味を持ち、じっくりと目を通してみました。2020年末には、経済産業省からの中間報告『DXレポート2』(⇒こちら)も発表されましたし、国としても、DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速に向けて、「デジタル化」というキーワードに重点を置いていることは間違いなさそうです。

前記の『DXレポート2』には、DX推進指標の分析結果として次のような記述があります。

●DX レポート発行から2年が経過した今般、DX推進指標の自己診断に取り組み、結果を提出した企業の中でも、95%の企業はDX にまったく取り組んでいないか 、取り組み始めた段階であり、 全社的な危機感の共有や意識改革のような段階に至っていない。
●先行企業と平均的な企業のDX推進状況は大きな差がある。

DXレポート2中間取りまとめ(概要) 2.1 DX推進指標の分析 結果
https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004-3.pdf

今回、感染症流行の影響により、多くの企業が事業継続上の困難に直面したのはご承知の通りです。このような状況において、テレワークのようなことですら社内IT環境や制度整備に柔軟・迅速に対応できなかった企業が少なくなかったことが、白書の目次構成にも反映されているのだろうと推測するところです。

全企業数の99%超、全従業者数の約70%を占める中小企業がデジタル化の波に乗ることで、国内産業全体として、ようやく、企業文化、商習慣、決済プロセス等の変革が進んでいくのだろうと予想されます。

デジタル化の3段階

以前に別のブログサイトに記事を投稿していたものと重なりますが、『DXレポート2』の中でも、DXに向けた3段階について分かり易い図を含めて掲載されていました。

  • デジタイゼーション(Digitization)
    • アナログ・物理データのデジタルデータ化
  • デジタライゼーション(Digitalization)
    • 個別の業務・製造プロセスのデジタル化
  • デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation / DX)
    • 組織横断全体の業務・製造プロセスのデジタル化
    • 顧客起点の価値創出のための事業やビジネスモデルの変革
DXの構造(DXの3段階)
DXレポート2中間取りまとめ(概要) 4.3 DX 成功パターンの策定 | DX の構造

昨年1年間にわたり、東京都の推進事業に参加させていただき、複数中小企業に向けてワークスタイル変革のためのコンサルティングを担当させていただきました。その時の肌感覚としては、例えば、次のような課題や悩みを多く伺いました。

  • デジタイゼーション段階
    • 【卸売業】オーダー受付用のWebシステムも用意してあるが、FAX利用を望む小売店が多数のため、「紙」が前提に業務も組み立てられている。(紙に追記しながらワークフローを進める、対応完了などのステータスも紙に追記して保存している等)
    • 【廃棄物処理業】最近は電子化が進んでいるが、法で義務付けられている作成書類(伝票)が、長い間、「紙」で運用されてきたため、他企業と連携・取引する上で、自社の一存で「すべてデジタル化」ということができない。
  • デジタライゼーション段階
    • 【製造業】少数のシニア・エンジニアが、適宜、作業中の設計者の席に行き、制作中の図面レビューや修正指示を行っている。テレワークなどのリモートワークが進むと、現状のようなコミュニケーションが難しくなり、シニア・エンジニアに負担が偏ってしまう。
    • 【製造業】総務・経理などは、比較的、ITツールを使った作業の受け渡しに移行しやすいが、何をもってパフォーマンスを計測すれば良いのか、これからも引き続きの課題。

デジタイゼーション段階やデジタライゼーション段階で試行錯誤を繰り返しながらチャレンジされている企業様は多かったのですが、残念ながら、デジタルトランスフォーメーション段階までリソース(予算や体制など)を割り当てて、実践にまで移されている企業様は、私が担当させていただいた範囲においては無かったように思います。
この点においては、『DXレポート2』にある「95%の企業はDX にまったく取り組んでいないか 、取り組み始めた段階であり、 全社的な危機感の共有や意識改革のような段階に至っていない。」というのがその通りであるという印象です。

ただ、AIを活用した自社物流網の効率化、IoTを使用した社会実験への参加など、新技術採用によるアイデアを多くお持ちの企業様もあり、何かのきっかけでブレイクスルーのかも・・・、と興味深くお話を聞かせていただきました。

私の経験を通しては上記のような印象ではありますが、実際のところ、デジタル化の動向がどうだったのか、改めて白書を眺めてみます。

デジタル化に対する意識の変容はどうか?

白書では、「感染症流行前後」で比較する内容となっていますので、動向としては「この1~2年間」での移り変わりと捉えて良さそうです。 2021年版中小企業白書の掲載内容をグラフにすると次の通りです。

「事業方針上の優先度は高い」と「事業方針上の優先度はやや高い」の合計値が、45.6%から61.6%に増加していることからも、きっかけは感染症の流行といった不幸な出来事ではありましたが、デジタル化の重要性が再認識されたことが分かります。「事業継続力の強化」という観点においても、デジタル化の重要性の変化(=意識が高まった)との回答が多く、生産性向上という観点に限らない意識の高まりが現れています。

事業継続力の強化におけるデジタル化の重要視への意識(中小企業白書)
意識が高まった
66.4%

デジタル化に向けて直面する課題は何か?

「製造業の製造分野」を対象とする調査結果とはなりますが、情報処理推進機構(IPA)から、『中小規模製造業の製造分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)のための事例調査報告書』(⇒こちら)が公表されています。

企業が直面した課題は4つの分類と、7つの取り組みの観点に整理できるとのこと。調査自体は、製造業の製造分野を対象に実施されたものではあるが、製造以外の場面においても共通する部分は多くあるように見える。果たして、自社は同じ課題を抱えてはいないか、掲げられているような取り組みができているか、チェックリストとして活用してみるのはいかがでしょう。

  • 4つの課題分類
    • マインドセット・企業文化の変革
    • データ活用の推進
    • 企業間連携の推進
    • 製品・サービスの変革
  • 7つの取り組み観点
    • 人材の調達・育成
    • 生産活動の見える化
    • 見える化で取得した情報を活用した生産活動の改善
    • 社内部門間連携
    • 社外資源の活用
    • 他の製造業者との連携
    • デジタル化や見える化の製品への展開

7つの取り組み観点の中でも、「人材の調達・育成」は他の6つを推進させていけるキー項目になるように見えます。自社内に、外部へのアウトソースではないビジネスIT人材が育てば、その人材が、「生産活動の見える化」や「見える化で取得した情報を活用した生産活動の改善」など、必要な取り組みを積極的に推進してくれるはず。

これまでのITは、多くの場合、判明している具体課題を解決するための「道具」という要素が強く、そのため、外部のITベンダーにすべてアウトソースということでも賄えてきました。今後は、次々に登場するIT技術の存在を前提に、その技術を採用することで「何を達成できるそうか?」(不確実なゴール)、仮説を立てながら最適解を探していくようなビジネス・マインドを持つIT人材の存在がますます重要になっていくことは確実と言えます。

「人材の調達・育成」は最優先課題

前節で、「(IT)人材の調達・育成」が最優先であるということを書きました。

セブン&アイ・ホールディングス社や良品計画社など、システム開発そのものを内製化するためにITエンジニアの大量確保を図っている企業もあるようです。(⇒日経XTECH「DX先進企業は内製へ、セブンや無印がITエンジニア大量確保に動く必然」

一方、少し前(2019年発表)の調査結果となりますが、中堅企業(従業員100名以上1,000名未満)を対象に実施した調査で、「ひとり情シス」と「ゼロ情シス」の企業割合が合わせて31%(2018年調査)から38%にポイントアップという結果が出ています。(⇒デル社「中堅企業IT投資動向調査」

「ひとり情シス」または「ゼロ情シス」の割合(デル社調査)
2018年調査
31%
2019年調査
38%

初めから「何から何まですべてのITを自社で」と掲げるのは現実味に欠けます。ただ、前述したように、重要なのは自社ビジネスや業務に対応するITの目利き力。ITに限らず、人材育成は一朝一夕に成し遂げられることではありませんから、将来に備えるという目的の下、今からでも自社内のIT人材を育て始めることが急務。

次回記事では、今回同様、中小企業白書の数字を使いながら、デジタル化を「人材」という面から捉えてみたいと思います。

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