使い方ルールを作って共有しよう!業務でチャットを使ってメリットを得るために。

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チャット、業務で効率的に利用できていますか?

スマートフォンの利用増大や、テレワークなど離れた環境の人が集まって仕事をする機会・場面が増え、今では多数の企業が導入しているチャットツール。Beforeコロナ時期の資料にはなりますが、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社が2017年2月に大手企業を対象に実施した実態調査では、ビジネス用途にチャットツールを導入する目的の理由には、次のようなものが挙げられています。

  • スピーディにコミュニケーションができる。
  • 会議時間の短縮が期待できる。
  • 複数人での情報共有が容易になる。(他部署間とのコミュニケーション活性化等)

LINEやSMS(ショートメッセージサービス)など、プライベートで「チャット」を利用することは日常化し、「チャットを使う」こと自体が難しくてできないという従業員は、今やごく少数だと思われますが、業務で効果を上げる、業務改善につなげるなどの目的を達成するには、その使い方に工夫が必要です。

私自身は、国内各拠点や海外拠点のITエンジニアと仕事をする機会も多く、チャットツールが「無ければ困る」環境で業務に従事してきました。そうした時に必ず準備・周知したのはが、チャットツールの使い方ルール。少なくとも最低限のルールを共有しないと、その場限りの連絡ツールと化してしまい、上記の「複数人での情報共有が容易」な状態など、遠い雲の上です。「あの情報どこにあったっけ?」「それだったら○○さんが着手してたよ」「読みづらい、見づらい」など、新たなカオス状態(無秩序、混沌)の出来上がりです。

実際、株式会社ビズヒッツ社が、2020年11月に実施した「ビジネスチャットの悩みに関する意識調査」にて、次のような悩みごとの存在が可視化されています。母集団は、仕事でチャットを利用している10~60代の男女221人中、「ビジネスチャットをするうえで悩みがある」と回答した人110人なので、サンプル数として多くはありませんが、ただ、私が自分の組織で感じたことや、取引先などから伺う悩みの内容と概ね一致している印象を持てる調査結果です。

特定の業務に従事している従業員と、部下の様子に広く目を届かせる必要のある管理職など、立場が違うと、当然ながら悩みごとの内容も異なってきます。自社で使用している他のITツール(電子メール、グループウェア、イントラネットサイトなど)との使い分、利用環境のバリエーション(オフィスの席でPCから利用、外出先からスマートフォンで利用など)、利用者の立場の違い(作業者、管理者など)を踏まえ、バランスよく使い方ルールを決めていくことが、業務効率の向上のための「全体最適」につながっていきそうです。

ビジネスチャットツールのメリットを十分引き出すために

チャットで素早い業務コミュニケーションを実現できるか?

準備や対策を何もしなければ・・・

チャットであれば、電話のように多少の申し訳なさ感(相手の邪魔しないかな?)を感じることもなく、発信者の都合で思ったときにすぐ送信できるのに加え、リアルタイムに読まれることを「期待」できるので、「連絡をためらう」ことが減る(結果、コミュニケーション時期が早くなる)のは確かです。

一方、上記のような「気軽さ」ゆえ、「自分で調べたり、探したりする前に、さっさと聞いてしまえ」的な人が増加し始めます。本人にとっては合理的な判断でもあり、一概に控える「べき」ことではないのですが、これが日常になってしまうと、普段から情報整理をしっかりしている人やもともと高いスキルを持っている人(たいてい「ビジネス能力が高い人」として重要業務を任されていることが多い)の負担が偏って増えてしまいます。「Yahoo!知恵袋」のような場であればスルーすれば良いのですが、発信者の作業停滞は、会社やプロジェクトチームのパフォーマンス劣化につながるので放置することもできない。。。

更には、いつも「さっさと聞いてしまえ」側の人は、何のプロセス(探す、調べる、考えるなど)を経ることもなく必要な情報を得られたことで、その情報の探し方や所在を知ろうとしないまま通り過ぎ、時が経つとまた同じ質問を繰り返します。こうして、「何もしない人」と「何でもする人」の二極化が進み、組織にとって戦力度の高い「何でもする人」の方が疲弊していく状況を招きがちです。

業務でチャットを適切・効果的に活用するための準備として

社内にいろいろな明示・黙示のルールがあるように、チャットについても「必要な」ルールは作りましょう。ただし、校則のように硬直的・盲目的に「こういうルールがあるからやる」と押しつけるようなものではなく、「こういう効果を達成したいから、そのためにこういう方法・ルールにしたい」と、きちんと望む姿の共有もしてください。

上記の「さっさと聞いてしまう人」も、自分が指示された期限内に仕事を終えたくてそうしていたなどの背景もあるでしょう。組織全体での実現イメージを共有することで、それぞれが自分の利害と周囲の利害を調整できるようになれば、自らも、「今はこうした方が良いだろう」とルールを理解し、前提とし、コミュニケーションの方法やタイミングを自ら考えるようになります。

そのルールの背景・経緯の共有なく、単に「こんな場合は・・・」「そんな場合は・・・」と何もかもをルール化することは、せっかく導入したチャットツールを、面倒だから業務では「使用しない」という状況に進んでいきかねないため、お勧めしません。

例えば、次のような「最低限の」ルールであれば、利用者の負担をいたずらに増やさずに済みそうです。

業務でのチャット使い方ルール(案)

業務関連の内容は、1対1ではなくグループチャット(チャンネル)を使う。

  • グループ内でも個人を宛先にすることはできますから、1対1(プライベートチャット)で連絡するのと同じように相手に通知も届きます。
  • 質問発信に対して「それなら自分も知っているよ」と宛先以外のメンバーが反応することができ、作業負荷や対応負荷の平準化につながります。
  • 多くの発信を共有することで、チャットツールに限らず「こういうチーム運営した方が良いのでは?」などの改善きっかけになり得ます。
  • 「今日のランチはどこにする?」みたいな内容は1対1でどうぞ。

長い内容(縦行数)は、チャット本文にすべてを書かず、先ずはサマリ程度に抑える。

  • ずっとデスクワークの人は、広いディスプレイを使うことが多いでしょうし、メッセージ受信の都度斜め読みができるのであまり支障ないかもしれません。
  • 外出が多い人は、外出先でスマートフォンやモバイル端末などの狭い画面で見るため、1画面ですら収まらない縦長長文は厳しいです。
  • 管理的な役割を担う人は、普段の活動から状況を把握・観測しますから、チャットツールの内容も広く目を通すことが多いです。内容細部を全部把握したい訳ではないので、縦長長文がくると網羅性が下がります。
  • 添付とは言っても、簡単なテキスト形式であればダウンロードなどしなくても、チャットツール画面上で閲覧できるので、特に不便はありませんよ。

情報の内容(ストック? フロー?)により、連絡方法を使い分ける。

  • 今後も必要になりそうだから蓄積しておきたい情報(ストック情報)と、用が済めば忘れてしまっても良い一時的なやり取り(フロー情報)を区別するのがお勧めです。
  • 例えば、「申し込みに使用したアカウントID教えて?」ときたら、本来そのような情報は所定の場所(社内グループウェアなど)に記録し、チャットツールではその「情報の所在」を伝えるようにします。質問メッセージの回答になるし、情報の探し方や所在も伝えられるので、ささやかですが「社内教育」の効果も期待できます。

就業時間外や休日(有給休暇含め)の対応ルールを決めておく

  • 緊急の連絡があり得る人はスマートフォンにもチャットアプリをインストールしていたりして反応し易くなっていたりするので、本来の労務ルールを逸脱しないよう運用ルールを決めましょう。何も決めないのはダメです。(「やり取りをしている間」だけではなく、「いつでも連絡がつく状態」が求められるのであれば、その状態の間すべてが「業務時間」とされる場合があります。)
  • テレワーク導入時に必要な規定内容の一つにもなります。そもそも、「就業時間外や休日にメッセージ発信は禁止」というのも一つですし、「発信は良しとするが応答(またはすぐの応答要求)は禁止」とするなど、業務形態などの実情に合わせて決めましょう。
  • どうしても必要な場合は対応期待時期を合わせて伝えましょう。「明日は自分が休むので、帰宅前に伝えておきたい」のような場合は、メッセージの冒頭に「水曜日(=翌日)朝の○○さんへ」などと添えるようにし、「今は」既読スルーを期待していることを伝えるようにしていました。

いかがでしょうか? 御社の悩みごとにマッチするものはありましたか?

最後に一点追加を。
チャットツールに限りませんが、多くの人は、社内上の立場が上(役職とか、社歴とか)の人からの発信には早く応えようと努めるものです。立場が上の人はそのような部分にも配慮し、積極的に対応スピードや優先度がコントロールできるような一言、一アクションを添えてあげると良いかもしれません。
例)Yes/Noクエスチョンであれば、「返答はアイコン(いいね、アイコンなど)で良いよ。」
例)連絡の受け手が至急かどうか判断できない場合は、「○○までに分かればいいよ。」
例)返信までの期間として数日空くものは、自動リマインド機能を設定しておく。

業務でのチャット利用を社員は望んでいる?

最後に、株式会社ヌーラボ社が、2018年3月に実施した「社内のコミュニケーションに関するアンケート調査」(有効回答327件)をご紹介して、今回の記事を終わりにしようと思います。 ヌーラボ社が提供するプロジェクト管理ツール「Backlog」(私も長く使用していましたが、とても使い易いツールです)のユーザーを対象にしたものということで、業種や回答者層に若干の偏り(回答母集団が、IT業種やエンジニア寄りかもしれない)はあるかもしれませんが、参考になる内容です。

2018年時点で既に上記の状況でしたから、働き方改革が更に進んだ現在では、ビジネスチャットの業務利用を望む声は、特定業種に限らず増加していると予想されます。
働く環境の柔軟性が増して従業員のモチベーションが向上することで、内発的動機付け(仕事自体に面白さ、楽しさを感じながら仕事ができる状態)が強化され、結果として、業務効率の向上につながるという側面も大きいかもしれません。

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